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主のことなしに生きていけない

2016年07月01日

山本 量太郎 (カトリック成城教会 主任司祭)

 「主のことなしに私たちは生きていくことができない」。これは、ローマ帝国の迫害時代から言い伝えられている有名な言葉
です。「主のこと」とは、ミサを指しているといわれています。迫害時代の信者たちは、「ミサなしには生きられない」と言って、見つかれば殺されてしまう危険があったにもかかわらず、ミサに集まったのです。そうした場所に使われていたとされるローマのカタコンベ(地下の墓)を見学すると、ひそひそ声で話してもよく聞こえるという実演をしてくれたりします。外に音がもれないように、ささやくような声でミサをしていた、というわけです。

長い迫害時代が終わって、そういう心配をしなくてもよくなった時の喜びは、どれほどのものだったでしょうか。ヒエロニムスという5世紀ごろの聖人は、ミサの奉献文の結びの栄唱(…すべての誉れと栄光は世々に至るまで)に一同が唱和する「アーメン」の声が、ローマのバジリカ聖堂に「かみなり」のように響きわたった、と記しています。

かつて日本にも長く激しい迫害の時代がありました。その結果として、わが国の教会には日本の殉教者をお祝いする日が実に4 つもあります。今日(7 月1日)は福者ペトロ岐部司祭と187 殉教者の記念日ですし、そのほかにも、有名な日本26 聖人殉教者の祝日(2 月5 日)をはじめ、日本205 福者殉教者の記念日(9 月10 日)、そして聖トマス西と15 殉教者の記念日(9 月28 日)があるのです。

それを「昔の殉教者は偉かった」と、過去のことにしてしまってはなりません。時代を越えて、彼らと私たちには共通のものがあるのです。それは、言うまでもなく、同じ信仰です。殉教者たちが命懸けで証しした信仰を、私たちは受け継いでいます。しかも、今日の私たちは、それを自由に表すことができるのです。その信仰の喜びを、特に主日ごとのミサに込め、精いっぱいの賛美と感謝をささげていこうではありませんか。

旧約聖書には、故郷の地で再出発したイスラエルの民に対して言われた感動的な言葉が残されています。「主を喜び祝うことこそ、あなたたちの力の源である」(ネヘミヤ8・10)。それはそのまま、今日の成城教会のミサに集まる私たちにも向けられているのです。

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