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桃の節句にあたって
2013年03月14日
福島 一基 (カトリック成城教会 主任司祭)
幼児洗礼式の度に思うことです。洗礼を受ける赤ん坊がお母さんの胸にうずくまっている姿に羨ましさを感じます。きっと自分もそんな時期があったに違いありません。温かくて柔らかいお母さんに抱かれている安心感、赤ん坊にとってこれ以上のものはないはずです。不純な思いだけではない憧れが、そこにあるように思えてなりません。
この原稿を書いている今日は2 月6 日、殉教女聖アガタの記念日です。朝ミサの説教でうまく話せませんでしたので、文章にしたいと思いました。聖アガタはローマ典文(第1 奉献文)にも名前が挙がるほど、ローマでは有名な殉教者であったようです。大変美しい貴族の娘であった彼女はキリスト者となり、激しい迫害を受けながらもキリストの奴隷となることこそ、もっとも高貴な生き方であると宣言し、数々の辱めに耐えながら命をささげ、信仰の証人となりました。インターネットの画像検索で聖アガタを入れますと、乳房を盆に載せた絵画が出てくるはずです。迫害の中で乳房を切り取られたという伝説があるそうです。女性のシンボルでもある乳房を切り取られるなんて、とても残酷です。それ以上にキリストに従うことを選んだ生き方は、わたしたち教会の力強い土台となっているのは言うまでもありません。彼女は乳房の温かさよりもキリストの愛の温かさに身をゆだねていったのでしょう。
わたしも聖アガタに倣い、乳房よりもキリストの愛に憧れと希望を見いだしたいところではありますが、一人の男として女性の乳房には少なからず憧れがあります。女性に相対すれば自然と目がいってしまいますし、そんな自分を恥ずかしくも思うところでもあります。母に聞くところによると、赤ん坊の頃は他の姉弟より母の乳房にしがみつき、離れなかったそうです。どうやらわたしの助平根性は生まれながらのものらしいです。
もうすでに母の胸に抱かれている感覚を思い出すことはできないのですが、間違いなくそこにあった温もりや柔らかさ、そして安心感がわたしを育んでくれたはずです。しかしそれは乳離れした者にとって必要がなくなったわけではありません。わたしたち人間は、人と人のふれあいや、その優しさの中に安心感を得ます。またその安心感が厳しい世の中で傷ついた身体や心を癒やし、明日に向かっていく力を与えてくれるのではないかと思います。
神様は女性の存在にそのような恵みを与えているのでしょう。桃の節句に殉教女の取り次ぎを求め、女性の皆様の健康をお祈り申し上げます。
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