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幸い
2015年10月01日
古郡 忠夫 (カトリック成城教会 助任司祭)
8月の最後に、中高生たちと山谷に路上生活者の方々のためのお弁当配りのボランティアに出かけました。東京の台東区の北東部と荒川区の南千住にまたがる地域は、山谷と呼ばれる日雇い労働者の街、いわゆるドヤ街で、今も簡易宿泊施設が多くあって、路上生活者の方、いわゆるホームレスの方々も多くいることで知られています。山谷で活動する山友会というNPO法人に出かけて行って、お弁当配りを手伝い、山谷の姿を一日に渡って見つめるというプログラムで、中高生たちも関心が高く、リーダーを含めて8人が参加しました。また一緒に行くことのできなかった中高生も、違う機会に、数名で山友会に出かけることができました。
わたしたちが参加した日、生憎(あいにく)の雨でしたが、お弁当配りに小学校2 年生の小さな女の子がお母さんと一緒に参加していました。とても可愛らしい女の子で、ホームレスの方々も、わたしなんかが弁当を手渡すよりも、その女の子から渡された方が嬉しいだろうと思いましたから、直接弁当を手渡すのは、中高生とその女の子にやってもらおうということになりました。お弁当を手渡す場所に行ってみると、そこには雨の中、100人以上の方が集まっていました。実際に、お弁当を渡しはじめると、女の子は思ったよりも背が小さく、しまった、これだとホームレスの方々はとても受取りにくかったなと思いました。しかしながらホームレスの方々は、背を曲げ、腰を屈かがめて、その女の子に「ありがとうね」と言いながらお弁当を受け取っておられました。
聖書の中でイエスは「貧しい人は幸いだ」と貧しき人びとに語っています(ルカ6・20)。「貧しい人」のもとになっている旧約聖書のヘブライ語は「アナウィーム」で、もともとこれは、圧迫を受けた者が背を曲げている、そんな様子を表すことばなのだといいます。人に助けてもらわなければ生きていくことができないと自覚する人は背を曲げ、腰を屈めていく。それをイエスは、「幸いだ」と言っているのです。
わたしたち人間存在は、助け合い、支え合う中で、ようやく生きていくことのできる存在です。決して一人では生きていけません。関わり、交わりの中で生きるときにこそ、本当の喜びがあると、イエスは今もわたしたちを真の喜びへと招いています。イエスは貧しき者は幸いだと語り、そして支え合い、交わりの中で生きたのでした。イエスが貧しき者は幸いと語ったとき、イエス御自身が腰を屈めていたのでしょう、目を上げて弟子たちを見つめているのです(同じくルカ6・20参照)。イエスをいつも中心にお迎えするわたしたちの集まりが、そんなイエスとともにあって、弱さを受け入れ合い、励まし合える、本当の「幸い」な集まりとなっていけますように祈りたいと思います。
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