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『ぶどう園の農夫』のたとえ マタイ(21・33-43)
2011年11月14日
安次嶺 晴実 (カトリック喜多見教会 主任司祭)
この福音のテーマは、天の国(神の国)でのあり方が示されています。ここに出てく
る主人(神さま)は、このぶどう園で働く農夫のために、すべてを準備して旅に出かけます。ぶどうの収穫の時が来たので、主人は収穫を受け取ろうとしますが、この時に事件が起こります。こともあろうに、農夫たちは、自分たちに仕事を与え、すべてを準備してくれた主人に対して、その使いの者たちを散々な目にあわせてしまうのです。普通に考えるなら、お世話になった主人に対して、感謝と喜びをもって預かった物の実りを差し出すべきだったのです。しかし、この農夫たちはとんでもない行動に出てしまいます。当然のことながら、こういう農夫たちは滅ぼされ、きちんと収穫を納める他の農夫に代えられてしまうところですが、さらに、主人は、収穫を受け取るために他の農夫ばかりでなく、自分の息子まで送ります。しかし、その息子まで殺されてしまうのです。ここに出てくる主人は、農夫たちのために出来る限りのことをしているのですが、彼らの方はそうはいきません。
ここに、私たちが忘れている心、回心のテーマがあるのです。日ごろ、私たちが頂いている恵みに、きちんと気づいているでしょうか?と。イエスさまは、私たちのために出来る限りのことをして、神さまとの関係を修復なさろうと命まで捧げて、その愛を示してくださいました。そのことに、私たちはどのようにこたえているでしょうか?ここが問われているのです。
このたとえ話は、イエスさまが祭司長や民の長老たちに対して言われた言葉ですが、
同時に、私たちへも語りかけてくるメッセージのようです。イエスさまは幾度となく、イスラエルの人々の心に訴え、愛とあわれみを説いてきました。生活に疲れた人々や、社会の底辺に苦しむ人々を優しく包んできました。しかし、そのイエスさまの姿を見
ても、彼らは回心しなかったのです。私たちはどうでしょうか?この福音は私たちにそのことを問いかけていると言えます。正しいことは分かっていても、なかなか本当の回心には達しないものです。自分を振り返ることは、簡単ではないのです。そのことに気づいて立ち返れと、語りかけられているようです。私たちの中にある醜いもの(回心を妨げるもの)に、きちんと目を向けることが求められているのではないでしょうか。振り返ってみると、心の中にある自分たちの弱さに途中で気がついても、なかなか正しい方向に修正できないことがたくさんあります。それでも、イエスさまは、私たちのために出来る限りのことをしてくださるのです。私たちがイエスさまの愛に包まれていることを思い起こし、主に従う決意を新たにしていきたいと思います。
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