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命のパン

2011年06月01日

福島 一基 (カトリック成城教会 主任司祭)

生きるためには、食事が大切なのは言うまでもありません。現在、1人暮らしのわたしは、その重要性を身にしみて感じているところです。それでも、忙しさのあまり食事をないがしろにするときもありますし、また、食事を作るのが本当に面倒なことであると実感しているところでもあります。でも、食事をおろそかにしていると、かなり生活が荒んできます。生活のリズムを保つためにも、食事をしっかりとることを心がけなくてはなりません。

イエスさまは自らを「命のパンである」とおっしゃいます。そのとおり、わたしたちカトリック教会はミサの中で聖別されるパン、すなわちご聖体を至聖なるもの、キリストそのものとして大切にしています。もちろん、それはイエスさまが最後の晩餐の席上で、弟子たちに遺言のように語った言葉に基づいてのことです。そしてまた、この聖別されたパンは何よりも、十字架の上で傷つき、殺されていくイエスさまの受難の姿をよく表します。この姿こそ、神の豊かな愛のしるしであり、わたしたちの罪をすべて覆い尽くし、救いへ導くものなのです。イエスさまは受難を体験することによって、救い主である自らの存在理由を示されたのです。

イエスさまのご聖体だけが、わたしたちの命を生かすものではありません。聖別されていないパンでも、また、わたしたちが食するものは、すべて命のためになります。そして、食べ物はすべてわたしたちに食されて、初めてその存在理由が明らかになります。食事はきれいに盛りつけられもしますが、ただ眺めるだけで済ませられるものではありません。やはり、口に入れてかみしめ、その味わいを感じることができなければ、いくらきれいなものであっても、食べ物としての役割を果たしたことにはなりません。もちろん、おいしいだけが食べ物ではなく、見た目が悪かったり、味が無くても、わたしたちは自分たちの命のために、それを食することもあります。「食べる」ことは「生きること」であると言っていた人がいますが、「食べ物」は命のためにならなければ、決して「食べ物」と呼べるものとはならないのではないかと思います。

イエスさまはわたしたちの命のためになってくださったから、キリストであり「命のパン」なのです。それでは、わたしたちは何のために「キリスト者」なのでしょうか。「命のパン」をいただいているわたしたちもまた、イエスさまのように、「命のパン」となるよう呼びかけられていることに心を留めたいものです。

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