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マリアの思い、エリサベトの思い
2021年05月01日
山本量太郎 (カトリック成城教会主任司祭)
5月の聖母月は、マリアのエリサベト訪問を記念する聖母の訪問の祝日(31日)で締めくくられます。その祝日だけでなく、聖母月をとおして、ルカの福音書1章が伝えるこの心温まる出来事を繰り返し味わうことができますように。
さて、マリアは自らも身重の身でしたが、百キロほどの道のりをものともせず、親類のエリサベトを訪ねました。マリアが暮らしていたガリラヤ地方のナザレから、南部のユダヤ地方まで、とても一日では行けない距離だったでしょう。でも、子どもに長年恵まれず、既に若いとは言えない歳になっていたエリサベトの妊娠を聞いて、若きマリアは神の偉大な力に驚き、遠距離にもかかわらず、山路を越えてお祝いに駆けつけたのです。エリサベトも、マリアが遠路はるばる訪ねてきてくれたことに感動し、マリアの懐妊を喜び、お祝いの言葉を贈ります。
ルカの福音書は、「マリアは、三か月ほどエリサベトのところに滞在してから、自分の家に帰った」と、聖母の訪問の出来事を締めくくっています。それは三か月という実に長期間の滞在でしたが、わたしたちにとっては、ルカの伝えるこの記述が知りうるすべてです。それを承知の上で、二人の女性の心に何が去来していたかを考えずにはいられませんし、どのような会話が日々交わされたのか、知りたいという思いが募ります。
エリサベトは、当時としては高齢の部類に入っていたのでしょうが、いったい何歳くらいだったのでしょうか。具体的な年齢は知るよしもありませんが、懐妊が神の大きな恵みであることを心から信じていても、高齢出産は今よりはるかに命懸けだったでしょうから、不安な日々を送っていたことでしょう。その意味でも、マリアの訪問は大きな励ましになったにちがいありません。
マリア自身も身ごもっていました。神の偉大なわざへの全幅の信頼があり、ヨセフの理解にも恵まれていました。しかし、周囲の理解はおよそ得られない状況だったのです。身のおきどころのない毎日だったかもしれません。住んでいる町から遠く離れて、心置きなく話せる親類のエリサベトと過ごした三か月間は、マリアにとっても心の休まる日々だったと言えるのではないでしょうか。
マリアとエリサベトの心に満ちていた信頼と喜びがわたしたちのうちにも宿り、長引くコロナ禍を乗り切ることができますように。
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