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1年過ごしてみて

2009年05月01日

福島 一基 (カトリック成城教会 主任司祭)

 成城教会の主任司祭となって1年が過ぎようとしています。先輩司祭から教えていただいたのですが、赴任した1年目は何も新しいことをせず、まずその教会共同体をしっかりと見極めることが大切であると。その通りに過ごしたつもりであったのですが、残念ながら成城教会という共同体を見極めるには至っておりません。人間1人を見極めることもそんなに簡単ではないのに、50年の歴史がある大所帯の成城教会を1年ちょっとで何もかも理解しようなんて傲慢の極みかもしれません。また教会はイエスさまが始められ、治めておられる神秘的な人の集まりです。それをわたしごときが何かをしようなんて思うこと自体、神を冒涜していることかもしれません。神のみ心が行われることだけを願い、ただその忠実な道具となることこそ、何より大切なことでしょう。しかしこのような言い訳を並べて何もしない怠け者にならないように気をつけます。

 さて人間の初めての罪は、アダムとエバが犯した神さまの言いつけを守らなかったことにあります。それはエデンの園の中央にある「善悪の知識の木」の果実を、蛇に「神のように善悪を知るものとなる」と、そそのかされて食べてしまったことです。この罪はアダムとエバが犯したからわたしちも同じように原罪に汚されたということではなく、この聖書を書いた人々が信仰を持って人間を観察し、人間の根源的な姿を著そうとしたものであると考えるべきでしょう。何より創世記という書物自体、天地創造を見た人間はだれもいないはずですから、嘘や人間の空想を書いているのではなく、この世の中はどんなものから成っているかを記したものとなるのです。

 様々な人間を観察する中、共通してあるのが「神のように善悪を知るものとなる」ことなのかもしれません。でも「神のようになる」ことはけっして悪いことではないでしょう。神のように何でもでき、間違いのない判断を下すことができればそれにこしたことはありません。しかし人間は神にはなれません。人間が神になってしまいますと、大変な勘違いが起こります。自分の判断をすべてとし、他を支配しようとしてしまうでしょう。そのような自己中心的思想に陥ってしまったら、自らのいのちをも危うくしてしまうでしょう。それでも神のようになれることは人間にとって「見るからに好ましい」誘惑です。この罪への傾きは未だわたしたち人間に猛威をふるっています。

 しかしイエスさまはわたしたちに実は神のようになることを教えます。それはなんでも知ることではなく、どんなことにも神のように愛することです。この愛によってわたしたちの原罪は浄められ、わたしたちの判断は間違いのないものとなっていくはずです。善悪の判断よりも、そこに愛があるのか、ないのか。このほうがよっぽど大切なのではないかと、最近つくづく思うのですがいかがでしょうか。成城教会を見極めることよりも愛することを優先していきたいものです。

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